外国人雇用の基本理解と必要書類の概要
外国人を雇用する際、適切な在留資格の確認が不可欠です。在留資格によって外国人が就ける業務範囲が決まるため、雇用内容に応じた資格確認と管理が必要です。
外国人雇用における在留資格の重要性
在留資格とは?
在留資格とは、日本に滞在する外国人が日本国内で行うことが認められている活動範囲を示すもの(※)で、外国人の職種や活動内容に応じて、さまざまな種類が設定されています。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、技術職や専門知識を要する業務、あるいは国際関連業務に従事する外国人に発給されます。
この資格があることで、外国人労働者はその範囲内での就労が認められ、企業も安心して雇用できます。
(※)参照元:出入国在留管理庁(https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/qaq5.html)
外国人を雇用する際の在留資格の役割
在留資格が適切であるかどうかは、雇用主の責任として確認すべき重要事項です。不適切な在留資格のまま雇用すると、企業に法的責任が生じるだけでなく、従業員も不法就労の状態になりかねません。
適切な在留資格の選定と確認は、外国人雇用を適法に進めるための必須工程です。
ビザ(査証)と在留資格の違いを知っておこう
ビザと在留資格の基本的な違い
「ビザ(査証)」と「在留資格」はしばしば混同されがちですが、役割が異なります。
ビザは外国人が日本に入国する際に必要な証明書で、日本国外にある日本大使館や領事館が発行します。
在留資格は、訪日外国人が日本国内で活動するために必要な許可で、ビザが許可された後、日本国内での活動内容に応じて地方出入国在留管理局から在留資格が付与されます。
したがって、ビザは「日本に入るための許可」、在留資格は「日本で活動するための許可」と覚えておきましょう。
両者の関係性と相互作用
ビザと在留資格は、密接に関連しながらも異なる性質を持ちます。ビザが有効であっても、在留資格が認められていなければ、日本国内での就労はできません。例えば、観光ビザでは労働が禁止されているため、この状態での雇用契約は違法です。雇用のために外国人が入国する場合、適切な在留資格を取得することが必要です。
外国人雇用における必要書類の全体像
入社前に必要な書類
外国人雇用に際して、雇用契約を結ぶ前に確認すべき書類がいくつかあります。
- 在留カードのコピー:在留資格と在留期限の確認に使用
- パスポートのコピー:国籍や渡航履歴の確認に使用
- 就労資格証明書:在留資格の内容が職務に合致していることを証明する書類
入社後に必要な書類
- 住民登録:労働者が居住している自治体への届け出
- 社会保険・雇用保険の加入手続き:外国人労働者も日本国内で働く場合、国内労働者と同様に社会保険や雇用保険の加入が必要
外国人雇用前に確認すべきポイント
採用予定職種と在留資格の対応関係
職種ごとの在留資格の種類
外国人を雇用する際、職種によって必要となる在留資格が異なります。例えば、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などが代表的な在留資格です。職種に応じた適切な在留資格を選定しなければ、就労が認められません。
在留資格には法律で定められた活動範囲があるため、事前の確認が必要です。在留資格や特定技能の内容は、出入国在留管理庁やJITCO(公益財団法人 国際人材協力機構)のWebサイトを見て確認するといいでしょう。
※参照元:出入国在留管理庁 在留資格一覧表(https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/qaq5.html)
※参照元:JITCO 在留資格「特定技能」とは(https://www.jitco.or.jp/ja/skill/)
適切な在留資格の選定方法
雇用予定の職種に応じて、求められる在留資格を選定するためには、事前に「在留資格の種類」を理解し、適正な選定を行う必要があります。雇用予定の職務内容を踏まえた上で、出入国在留管理庁の定める在留資格との整合性を確認しなければなりません。
就労ビザ取得の見込みと手続き
就労ビザ取得の要件
就労ビザ取得には、企業が作成する「雇用契約書」または「労働条件通知書」が必要です。どちらかの書類がないと就労ビザの申請ができないため、内定を通知したら速やかに作成しましょう。
ビザ取得のプロセスとタイムライン
雇用契約締結後、就労ビザ取得の手続きを行います。
- 在留資格認定証明書の交付申請:企業が入国管理局へ提出する。審査完了後、基準を満たしていると判断されたら証明書が交付される。
- 就労ビザの申請:外国人労働者が現地の日本大使館や領事館、または日本国内の入国管理局へ申請する。申請受理後、1~3ヶ月ほど審査が行われる。
- 入国および日本での住民登録:就労ビザが発行されたら日本に入国し、居住予定の自治体へ住民登録を行う。
採用予定者の居住状況の確認
国内在住者と海外在住者の雇用手続きの違い
採用予定者の居住地が国内か海外かで、必要な手続きや書類が異なります。国内在住者は、既に日本国内での在留資格を持っている場合が多く、手続きが比較的スムーズに進められますが、海外在住者を採用する場合は渡航に必要なビザや在留資格の申請が必要です。
各ケースに応じた対応方法
例えば日本在住で日本国内で転職する外国人の場合、前職と同じ職種なのか違う職種なのかによって「在留資格変更許可申請」が必要かどうかが分かれます。
他にも留学生を社員として雇用する場合は、ビザの区分を留学から就労に変更しなければいけません。
雇用する外国人がどのケースに当てはまるのか、事前にしっかり確認しましょう。
入社前に完了すべき書類手続き
【国内在住者編】入社前に必要な手続きと書類
現在保持している在留資格の確認
国内在住の外国人を雇用する際、まず確認すべきは、保持している在留資格です。例えば、学生ビザを持つ外国人をフルタイムで雇用する場合、在留資格の変更が必要になります。
在留資格の変更方法
在留資格の変更手続きは、出入国在留管理庁で行います。変更にあたっては、雇用契約書や事業内容を示す書類の提出が求められる場合があります。
在留資格の申請方法・期間・申請場所
変更する場合の申請は、地方入国管理局で行います。直接出向いて申請するか、オンラインのどちらかで申請可能です。手続き完了までには数週間かかるため、余裕をもって申請を行いましょう。
【海外在住者編】入社前に必要な手続きと書類
在留資格取得申請に必要な書類一覧
海外在住者を雇用する場合は、企業側と外国人労働者側それぞれが書類を用意しなければいけません。
企業側が用意する書類
- 雇用契約書
- 全部事項証明書(企業謄本)
- 決算報告書のコピー
- 企業案内などのパンフレットなど
外国人労働者側が用意する書類
- 卒業証明書または卒業見込み書
- パスポート
ビザ申請以外の必要書類
入国後には、住民登録や社会保険加入の手続きも必須です。住民登録は、居住地の市区町村役場で行います。
雇用契約書と労働条件通知書の作成
雇用契約書と労働条件通知書の違い
雇用契約書は、雇用締結にあたって労働者と雇用者(企業)の間で交わす契約書で、署名・捺印後にお互い1部ずつ保管します。また、労働条件通知書は、雇用契約とは別に労働条件について定めた内容を記した書類で、雇用者は必ず労働者へ通知しなければなりません。
必要な項目と法的要件
労働条件通知書には、次の8項目の記載が必須です。
- 労働契約の期間
- 就業場所
- 業務内容
- 始業・終業時刻
- 休憩時間
- 休日・休暇
- 賃金の計算方法や締日・支払日
- 解雇を含む退職に関する事項
必須項目が満たされていれば、書式の指定はありません。
外国人雇用後に行う手続きとは
雇用保険・社会保険の加入手続き
社会保険加入方法
外国人労働者も社会保険の対象です。加入手続きは雇用開始と同時に行います。
労災保険・雇用保険の適用範囲
日本国内で働く外国人も、労災保険や雇用保険の対象となります。保険手続きは労働基準監督署で行います。
外国人雇用状況届出書の提出
提出先と提出方法
外国人雇用者の状況は、ハローワークへ届出が必要です。提出はオンラインでも可能です。
重要な記載事項
雇用状況届には、在留資格や雇用形態などを記載します。不備があると法令違反になるため、正確に記載します。
在留資格の更新手続き
更新期限の管理方法
在留資格には期限があるため、更新手続きを忘れないようにしましょう。企業としても期限を把握し、早めに手続きができる体制を整えると安心です。
更新手続きの具体的なステップ
在留資格の更新は、出入国在留管理庁で行います。更新時には、雇用契約書や在職証明書の提出が求められる場合があるため、必要な書類を揃えて手続きを進めましょう。
外国人雇用における実務的な注意点
在留資格で認められていない業務に従事させない
業務内容と在留資格の関係
外国人を雇用する際、業務内容が在留資格に合致していることを確認する必要があります。例えば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許可されるのは、技術系や専門知識を活かす職種に限られます。この資格を持つ労働者に単純労働を行わせると、在留資格に違反し違法就労のリスクが生じるため、在留資格の範囲を超えないよう業務内容を慎重に管理しましょう。
違法就労防止のための内部管理方法
違法就労を防ぐため、外国人労働者の在留資格と業務内容の定期的な確認が推奨されます。また、企業内部で在留資格と業務内容を一元管理できる仕組みを構築することも効果的です。人事システムや管理台帳を活用して、就労資格の有効期限や業務内容に違反がないか、定期的に確認を行うようにするとよいでしょう。
就労資格証明書の申請期間を把握しておこう
申請期間とその重要性
就労資格証明書は、外国人が現在の在留資格で就労する権利があることを証明する重要な書類です。企業が外国人労働者の在留資格の変更や延長を希望する場合、通常1ヶ月以上の申請期間が必要です。この期間内に申請を行わないと、労働者が就労を継続できなくなるリスクがあるため、就労資格証明書の申請タイミングは事前に把握しておきましょう。
遅延を防ぐための対策
遅延を防ぐため、申請期日のリマインダー設定や手続きを担当するスタッフの配置などの対策が有効です。人事担当者が在留資格の管理に対する責任を明確にし、定期的な資格更新や申請の進捗を確認する体制を整えることが重要です。
同一労働同一賃金・最低賃金の遵守
公平な給与体系の構築
外国人労働者にも「同一労働同一賃金」の原則が適用されます。同じ仕事を行うのであれば、日本人と外国人で賃金差がないようにすることが法的に求められています。給与体系の構築において、外国人であることを理由に賃金に差が出ないよう注意しましょう。
差別防止策と法令遵守のポイント
差別を防ぐために、給与だけでなく、福利厚生や労働条件も外国人と日本人で均等に設定することが求められます。企業は外国人労働者の処遇に関する差別防止策を策定し、全ての労働者にとって公正な職場環境を整えることで、法令を順守した外国人雇用が可能になります。
外国人雇用に必要な具体的書類一覧
入社前に必要な書類
- 在留カードの確認書類
外国人雇用の際には、在留カードの提示を求め、適正な在留資格と就労範囲を確認します。コピーを保管し、有効期限や資格内容を適切に把握しましょう。 - 雇用契約書
雇用契約書は、日本人労働者と同様、外国人労働者にも作成します。契約内容は労働基準法に準拠し、賃金、勤務時間、業務内容などを明確に記載することが求められます。 - 労働条件通知書
労働条件通知書は、契約前に労働条件を示すために必須の書類です。外国人労働者に対しても、労働時間、休日、賃金などを明示し、雇用条件を理解させるために使用します。
入社後に必要な書類
- 外国人雇用状況届出書
外国人労働者を雇用する際には、雇用状況届出書をハローワークに提出することが義務付けられています。これは雇用管理の適正化と、不法就労防止のために欠かせない書類です。 - 社会保険加入書類
外国人労働者も日本国内で働く場合、健康保険や厚生年金、労災保険など、社会保険への加入が義務付けられています。日本国内の労働者と同様に手続きを進め、健康保険証や年金手帳などの交付を行います。 - 在留資格の更新申請書
長期雇用が見込まれる場合には、在留資格の期限に合わせて更新申請が必要です。更新手続きの際には、更新申請書とともに雇用契約書などの書類を提出し、在留期間の延長を行います。
特定のケースに必要な追加書類
海外現地からの採用の場合の追加書類
海外在住の外国人を採用する場合には、在留資格認定証明書の申請が必要です。これは入国管理局で発行される証明書で、発行されると労働者は日本に入国して就労するためのビザ申請が可能となります。
留学生を正社員として雇用する際の特別書類
留学生を卒業後に正社員として雇用する際には、在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」など適切な資格に変更する必要があります。このための手続きには、雇用契約書や卒業証明書が必要です。
外国人雇用をスムーズに進めるための支援サービス
外国人雇用管理アドバイザー制度の活用
アドバイザー制度の概要とメリット
外国人雇用管理アドバイザー制度では、外国人の雇用管理に関する専門家が企業に助言を行います。制度を活用することで、在留資格の確認や必要な書類手続きなど、外国人雇用に伴う法的・実務的な問題への対応がスムーズになります。
利用方法と具体的なサポート内容
アドバイザー制度の利用は、所定の申請を行うことで可能です。サポート内容には、書類手続きのサポートや在留資格の管理に関するアドバイスが含まれます。
外国人採用支援サービス利用の検討も
採用支援サービスとは
外国人労働者の採用支援サービスには、採用活動や在留資格申請、雇用手続きなどを一括でサポートする企業のことを指します。利用することで外国人労働者の採用から入社手続きまでをスムーズに行えます。
サービスの選び方
サービスを選ぶ際には、サポート内容や費用、サービス提供者の実績を確認することが重要です。特定の在留資格や職種に特化したサポートを提供している企業もあり、自社のニーズに合わせた選択を行いましょう。
行政書士によるサポートの活用
行政書士の役割と具体的な支援内容
行政書士は、在留資格の取得や変更手続きに精通しており、企業が煩雑な手続きをスムーズに進めるためのサポートを行います。書類作成から役所への申請代行までを一貫して担当するため、企業の負担を軽減できます。
サポート利用のメリット
行政書士を利用することで、書類の記入漏れや申請ミスを防ぎ、確実に手続きを完了できるというメリットがあります。企業にとっては、時間と手間の削減にもつながります。
外国人雇用に関するよくある質問(FAQ)
- 在留資格の申請や変更はどこで行えますか?
- 在留資格の申請や変更は、全国の出入国在留管理庁で行えます。手続き内容に応じて必要な書類が異なるため、公式サイトを確認してください。
- 在留資格の確認方法を教えてください。
- 在留資格は在留カードで確認できます。企業としても在留カードのコピーを保管し、在留期間や資格内容を定期的に確認することが求められます。
- 日本国内の別の企業で働いていた外国人労働者を雇用する場合、在留資格の手続きを新たに行う必要がありますか?
- 在留資格が雇用予定の職種に適しているかを確認しましょう。適していない場合、資格の変更が必要です。
- 外国人労働者を雇用した場合、在留資格の申請以外に行うべきことがありますか?
- 雇用開始後、社会保険や雇用保険の加入手続き、さらにハローワークへの外国人雇用状況届出が必要です。
外国人雇用に必要な書類と手続きのポイント
外国人雇用において、適切な在留資格と必要書類の確認・管理が法令遵守とリスク回避につながります。入社前から在留資格の確認や書類管理を徹底し、行政手続きも確実に行うことで、スムーズかつ合法的な外国人雇用が可能となります。