外国人の雇用に関して最初の関門となるのが、「在留資格」です。外国籍の人が日本で就労するためには、どのような在留資格を持っているか、必ず確認しなければなりません。
そこでここでは、外国人の雇用とは切っても切れない在留資格にはどのようなものがあるのか、ビザとの違いはなんなのか、注意しなければいけないことはなにかなど、外国人の雇用に知っておかねばならない基本事項について解説していきます。
外国人雇用と在留資格の基本を理解しよう
採用しようとしている外国人労働者が、日本においてどのような在留資格を持っているかを確認しなければ、外国人の雇用はできません。
雇用する企業側には適切な手続きと法令の遵守が求められ、違反した場合には法的リスクが生じます。
在留資格とは?基本概念と重要性
在留資格の定義と役割
在留資格とは、外国人が日本国内で活動を行うために必要な法的ステータスで、「あなたは、XXX の活動をするために日本に滞在してもよい」と示すもの。外国人材が日本滞在中に許される活動内容は、この在留資格によって指定されています。
「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」など、在留資格には複数の種類があります。活動の内容に応じて取得できる資格が異なるため、外国人を雇用する際にはこの在留資格の確認が必須となっています。
なお、在留資格の種類については、後述する「外国人を雇用できる在留資格の種類と雇用できない資格」の項目で解説します。
在留資格を満たしていない場合「不法就労」とみなされる
外国人を雇用する日本の企業や事業者は、外国人を雇用する際に業務内容に合致した在留資格を有している外国人を雇用しなければなりません。
不法就労とみなされるケースは以下の3つです。
- 不法滞在者や被退去強制者が働くケース
- 就労できる在留資格を有していない外国人で、出入国管理庁より働く許可を得ていないのに働くケース
- 出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働くケース
万が一不法就労させてしまった、もしくは不法就労とわかっていてあっせんした場合は「不法就労助長罪」に問われ、事業主や斡旋業者に3年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科される恐れがあります。
また外国人労働者の雇い入れもしくは離職時にハローワークに届け出をしなかったり、虚偽の届出をしたりした人にも、30万円以下の罰金が科せられます(※)。
たとえ故意でなくても事業主や斡旋事業者が罰せられることになりますので、在留資格の確認は非常に重要です。
(※)参照元[PDF]:出入国在留管理庁(https://www.moj.go.jp/isa/content/001349112.pdf)
在留資格とビザ(査証)はどう違う?
在留資格は「法的ステータス」、ビザ(査証)は「入国許可証」
ビザ(査証)は、外国人が日本に入国する際に必要な許可証です。入国前に日本国大使館または領事館などの在外日本公館で取得します。
外国人が取得したビザの証印を入国港で受けることで、在留資格と在留期間が確定されます。日本への入国をビザで許可され、在留資格と在留期間もここで決定されることになります。
ビザと在留資格は切っても切れない関係
ビザは「入国の許可証」、在留資格は「滞在中の活動内容を決める資格」として、双方があって初めて日本での就労が可能になるため、ビザと在留資格は切っても切れない関係にあります。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを取得すると同時にそれと合致した在留資格を持っていれば、企業での業務に従事できるようになるということです。
在留資格が認められた範囲外の活動を行う場合には、資格外活動許可が必要です。無許可で資格外の業務を行うと違法行為と見なされますので、雇用する企業や事業者も、雇用される外国人側も注意が必要です。
(※)参照元:日本貿易振興機構(ジェトロ)公式サイト「Section 2. ビザ(査証)・在留資格」(https://www.jetro.go.jp/invest/setting_up/section2/)
在留資格の確認方法
在留資格の確認方法は、まず「在留カード」を見ること。場合により、パスポートや就労資格証明書を確認します。
在留カードの確認ポイント…在留カードを確認する際には、外国人の名前、在留資格、在留期限(在留期間満了日)、就労可能かどうかを確認します。「在留カード等読取アプリケーション」や入管庁の「在留カード等番号失効情報照会」などを活用して、在留資格の失効や在留期間切れがないか、確認漏れがないように注意しましょう。
法的遵守のためのチェックリスト…外国人労働者の在留資格に関する法的な遵守を徹底するために、次のようなチェックリストを作成するのがおすすめです。
- 在留カードの有効期限:期限が切れていないか確認します。
- 在留資格と業務内容の一致:雇用予定の業務が資格内の活動に含まれるかチェックします。
- 資格外活動許可の確認:業務内容が資格外に該当する場合、資格外活動許可が取得されているか確認します。
就労可能な在留資格の種類や在留期限などの確認方法は、出入国在留管理庁が公開していますので、それをベースにしてチェックリストを作成するといいでしょう(※)。
(※)参照元[PDF]:出入国在留管理庁(https://www.moj.go.jp/isa/content/001349112.pdf)
(※)参照元:厚生労働省「二.届出事項の確認方法について」(https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/anteikyoku/gairou/980908gai02.htm)
外国人を雇用できる在留資格の種類と雇用できない資格
外国人労働者の雇用では、在留資格によって就労できる職種や期間などが異なります。日本での就労が許可されない在留資格と併せて説明していきます。
就労に制限のない在留資格
身分・地位に基づく在留資格
- 永住者:法務大臣が永住を認める外国人
- 日本人の配偶者等:日本人の配偶者、日本人の子として生まれた者、特別養子
- 永住者の配偶者等:永住者、特別永住者、日本で生まれ引き続き在留している子
- 定住者:法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者(第三国定住難民,日系3世,中国残留邦人等)
身分や地位に基づく在留資格を持つ人材は、企業のニーズに合わせてさまざまな業務に従事できます。この在留資格を持つ外国人の採用は、ほかの在留資格に比べて手続きが簡略化されるというメリットもあります。
就労に制限のある在留資格
ここでは外交・公用・教授・芸術・宗教・報道といった、高度専門職の在留資格以外の在留資格の種類について説明します。
【技術・人文知識・国際業務】
この在留資格は、主に専門知識や技術を活かした仕事が対象。機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、マーケティング業務従事者などが該当します。
取得要件としては、在留資格に即した学歴や実務経験が求められると同時に、専門知識や技術を必要としない単純労働には従事できません。
【特定技能】
特定技能の在留資格は特定技能1号と特定技能2号に分かれています。主に特定の産業分野で労働力不足を補うための在留資格です。
- 特定技能1号:介護、建設、宿泊など14の分野で単純労働が可能。日本語能力試験や技能試験の合格が必須。
- 特定技能2号:1号よりも高度な技能を求められ、特定産業分野に属する熟練した技能を有する外国人に許可される在留資格。建設分野など一部の業種に限られる。2号は長期的な在留が認められ、家族の帯同も可能。
【技能実習】
技能実習制度は、外国人が日本で特定の技術を学び、帰国後に活用することを目的として1993年に制度化されたものです。技能実習法には「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と記されているため、業務はあくまで研修を目的としています。
技能実習には1号から3号までの分類があり、1号は1年以内の在留資格。2号と3号は試験への合格や対象職種の制限などが設けられ、これをクリアすれば最長5年間の就労が許されます。
2027年4月には「育成就労制度」が施行
ただし、2027年4月1日には外国人技能実習制度の代わりに「育成就労制度」が施行されます。人材育成を通じた国際貢献を目的としていた技能実習制度と異なり、育成就労制度では「人材育成と人材確保」を目的としています。
技能実習1号、2号、3号という区別はなくなってすべて育成就労という在留資格となり、在留期間は原則「3年」になります。これまで認められていなかった転籍も可能となるなど、さまざまな違いがあります。
出入国在留管理庁の公式サイトで技能実習制度との違いなど最新の情報をキャッチアップしておきましょう。
(※)参照元:出入国在留管理庁公式サイト「育成就労制度」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/index_00005.html)
【高度専門職】
高度専門職は、高度人材ポイント制度に基づく資格で、教育や研究、技術開発などの分野で活躍する外国人に付与されます。在留期間が5年に制限される高度専門職1号と、在留期間無制限の高度専門職2号に分かれます。
高度人材ポイント制度とは、学歴や職歴、年収、日本語能力などの項目ごとにポイントを付けその合計が既定の点数以上に達した人は、高度専門職として認定されます。
高度専門職は長期的な在留や家族の帯同、永住への移行がしやすくなります。専門職として長く日本で働いてほしい企業にとって、●高度専門職の在留資格を持つ外国人の雇用は貴重な人材であるといえます。
就労不可の在留資格
【留学】
外国人留学生は学業が主目的であるため、就労には制限がかかります。ただし、アルバイトとしての労働は「資格外活動許可」を取得することで、週28時間以内の勤務が可能です。
正社員としての採用には在留資格の変更が必要ですが、留学の要件や在籍する学校の区分次第では変更不可の場合があるのでご注意ください。
【観光・短期滞在・研修】
「観光」「短期滞在」「研修」など短期の在留資格は、基本的に就労が認められていません。このような資格を持つ外国人が働くことは法律違反となります。就労目的以外でビザを取得して来日した外国人は、基本的には働けません(資格外活動許可を取得した場合を除く)。
雇用時のリスクと対策
就労不可の在留資格を持つ人材を雇用するリスクを回避するためには、企業側が着実に在留カードを確認し、資格内容に応じた雇用が可能な外国人かどうかを判断することが求められます。
在留資格の内容を十分に理解し、適切に外国人労働者を雇用することは、企業の法的リスクの低減と健全な雇用環境の整備に貢献します。
(※)参照元:出入国在留管理庁「在留資格一覧表」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/qaq5.html)
外国人を雇用するための在留資格取得の流れ
在留資格取得は、法的手続きと共に企業としての遵守事項も多く、申請の流れを理解することが重要です。
在留資格申請の基本手順
これから日本に入国する外国人の場合
地方出入国在留管理局の窓口での申請が必要になります。在留資格認定証明書交付申請では、主に以下の書類が求められます。
- 申請書:在留資格に応じた専用の申請書
- パスポート:コピーおよび写真
- 雇用契約書:雇用条件を示す証拠
- 企業情報の資料:会社概要や事業内容を示す書類
- 労働者の学歴・職務経歴書:資格に応じた学歴や職務経歴書などの書類
高度専門職の在留資格を申請する場合は、これから行おうとしている活動に関係する「ポイント計算表」と、そのポイントを立証する資料の提出が必要です。申請には、準備から審査まで数週間から数ヶ月かかるのが一般的です。
る場合が一般的です。
- 必要書類の準備:必要書類を揃え、正確に記入する
- 出入国在留管理庁への提出:各地の出入国在留管理庁で申請を行う
- 審査:審査の内容により、追加書類の提出が求められることもあり
- 結果の通知:許可されると在留カードが発行される
初回の在留資格申請は2〜3ヶ月程度かかるため、計画的な準備が必要です。
すでに日本に在留もしくは在留資格の変更が必要な外国人の場合
地方出入国在留管理局の窓口での申請が必要な点は変わりませんが、申請するのは「在留資格変更許可申請」もしくは「在留期間更新許可申請」になります。
保有している活動資格によって必要となる書類が異なりますので、以下の出入国在留管理庁の公式サイトなどで確認してください。
◆出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請」/https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-1.html
◆出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」/https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-2.html
◆出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請」/https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-3.html
在留資格変更・更新手続き
変更の必要性と条件
外国人労働者が業務内容の変更や転職をする場合、在留資格の変更が必要となることがあります。変更を怠ると違法就労になるため、企業側も在留資格の適合性を必ず確認しましょう。
更新手続きの具体的なステップ
在留資格の期限が近づいた場合、更新手続きが必要です。更新手続きには次のようなステップがあります。
- 更新申請書の提出:在留資格の有効期限の3ヶ月前から申請が可能
- 提出書類の準備:申請書、在留カード、企業の雇用契約証明書などを用意
- 出入国在留管理庁での審査:審査通過後、在留資格の更新が承認される
特定技能申請での注意点
単純労働と専門的業務の区別
特定技能の在留資格は、特定の分野で労働力不足を補うために導入されており、主に14業種に限定されています。単純労働が認められる資格ですが、技術・人文知識・国際業務などの専門業務と混同しないよう注意が必要です。
各業務の区分を正確に把握することで、不適切な申請を回避できます。ただし先述したように2027年には「育成就労制度」が施行されるため、新しい制度の情報を事前に収集しておくことを推奨します。
不許可事例とその対処法
特定技能の申請が不許可となる主な理由には、業務内容の不一致や申請書類の不備があります。たとえば建設業の特定技能を持つ外国人労働者が同業他社へ転職する場合、転職前に在留資格変更許可申請が必須です。
これは外国人労働者が申請した場所(企業)でしか就労できず、万が一在留資格変更許可申請を行わずに転職すると、特定技能の分野が同じでも申請が不許可になりかねません(※)。
不許可となることを避けるためには、事前に業務内容が申請資格に合致しているか確認すること、転職する場合は転職前に在留資格変更・更新手続きを忘れないように注意してください。
(※)参照元:外国人採用サポネット(マイナビグローバル)(https://global-saponet.mgl.mynavi.jp/visa/7251#chapter-8)
在留資格取得後の業務範囲管理
業務内容の変更時の手続き
外国人労働者を範囲外の業務に従事させる場合は、先ほど説明したように新たな在留資格の取得や資格外活動許可が必要です。
将来的に業務変更の可能性がある企業は、予め在留資格の変更手続き方法や申請先などを事前に確認しておくことをおすすめします。
違法就労防止のための内部管理方法
違法就労を防ぐため、企業は外国人労働者の在留資格や在留期間を管理する体制を整えることが重要です。
例えば、資格更新や業務変更のタイミングで定期的に在留カードを確認して記録に残し、外国人雇用の責任者による一元管理や複数社員による定期的なチェックなど、チェック体制を具体化しておくことが大事です。
外国人の雇用が決まってから必要な手続き
在留資格や在留期間の確認が終わり、外国人の雇用が決まってから必要な手続きもあります。
雇用契約から社会保険、労働保険の加入手続きまでそれぞれ説明していきます。
雇用契約書と労働条件通知書の作成
必要な項目と法的要件
外国人労働者を雇用する際、労働条件を明確に記載した労働条件通知書の交付が義務付けられています。記載すべき項目には、以下のものが含まれます。
- 契約期間:雇用契約の有効期間を明示
- 労働時間・休憩時間:勤務時間の詳細や休憩の有無を記載
- 給与額と支給日:給与の金額、支給日および支給方法を明記
- 休暇:有給休暇や特別休暇に関する情報の明記
多言語対応は今後ますます重要に
外国人労働者が母国語で労働条件を理解できるよう、多言語対応の契約書を準備することが推奨されます。外国人の雇用を検討している中小企業が増えていますが、まだまだ多言語化に対応しきれていないのが実情です。
幸いにもAI通訳サービスや自動多言語化ツールなども多数リリースされていますので、活用してみてはいかがでしょうか。ハローワークの多言語コンタクトセンターなどの情報も人事担当者が集め、外国人労働者に共有すると親切です。
社会保険・労働保険の手続き
外国人労働者の社会保険加入方法
外国人労働者も日本の社会保険制度に加入する必要があります。健康保険や厚生年金の加入要件は日本人労働者と同じで、1週間あたりの労働時間と1ヶ月の所定労働日数の基準を満たしている場合は強制加入です(※)。加入手続きは、企業が管轄の年金事務所に必要書類を提出し、登録を行います。
(※)参照元[PDF]:日本年金機構 厚生年金保険・健康保険制度のご案内(https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kaigai/konen-kenpo.files/Japanese.pdf)
労災保険・雇用保険の適用範囲
労災保険はすべての労働者が対象ですので、外国人を雇用する場合も労災保険と雇用保険が適用されます。雇用保険は、週の労働時間が20時間以上で31日以上の雇用が見込まれる場合、加入対象となります。労災保険と雇用保険では外国人労働者の加入要件が異なりますので、注意しましょう。
(※)参照元[PDF]:厚生労働省 都道府県労働局 ハローワーク(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/dl/250318.pdf)
外国人雇用状況届出書の提出
提出先と提出方法
外国人労働者を雇用した企業は、雇用開始から所定の期限までに「外国人雇用状況届出書」をハローワークに提出する必要があります。提出は電子申請もしくは郵送で、企業所在地管轄のハローワークに提出します。
万が一届出を怠ったり、虚偽の届出をしてしまったりすると、30万円以下の罰金対象(※)となるので注意してください。
届出書には、労働者の在留資格や在留期間、在留カード番号などの情報を記載します。提出書類に誤りがないよう、しっかり確認しましょう。
(※)参照元:厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html)
健康診断と安全配慮義務
健康診断(法定健診)の実施
事業者は日本人同様、外国人労働者に対して労働安全衛生法などで定められている健康診断(法定健診)を実施しなければなりません。その際注意しなければならないのが、健康診断を委託している指定医療機関が、外国語対応が可能かどうか。
意思の疎通ができない状況で医療機関にかかることに対して不安を感じることも少なくないので、雇用企業の担当者が付き添うといった配慮も大事です。
外国人労働者への安全配慮義務とは
外国人を雇用する際に忘れてはならないのが、「安全衛生教育」です。母国語での説明だけではなく、動画やマンガなども活用してわかりやすく説明してあげることが大事です。
厚生労働省では適切な安全衛生教育を行うためのツール(※)も提供していますので、それらを活用して外国人労働者が学びやすい環境を整えましょう。
(※)参考:厚生労働省「外国人労働者の安全衛生管理」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186714.html)
ハラスメント防止と職場環境整備も必須
多文化理解を促進し、労働者が安心して働ける環境を提供するため、企業は職場内でのハラスメント防止策を講じなければなりません。「多文化共生」などとスローガンを示すだけでは十分ではありません。
外国人労働者が適応しやすいよう、職場のルールや業務内容を明確にし、必要に応じて多言語のガイドラインを用意して教育しながら、同時に日本人社員への教育も並行して進めるようにしましょう。
「知らないことによる無関心」が生じないよう、外国人労働者への理解やサポートが自然にできるよう、職場環境を整えていくのが理想です。
外国人雇用においてとくに注意すべきこと
ここでは、在留資格の更新管理や試用期間中の評価、異文化対応の留意点など、外国人雇用においてとくに注意すべきことについてまとめておきます。
在留カードの更新管理
在留資格と在留期限(在留期間満了日)の管理方法
企業は外国人従業員の在留カードに記載されている在留資格と在留期限を定期的に確認し、更新手続きに遅れが出ないように管理する仕組みを整えます。管理ソフトやスプレッドシートなどを使用して、更新期限を一元管理できる方法がおすすめです。
更新手続きのタイミングと対応策
更新手続きは、在留カードの在留期間満了日の2ヶ月前から満了日までに行います。更新に必要な書類の準備や、万が一審査に時間がかかる場合を想定し、早めの申請が推奨されます。
同じタイミングで業務内容が在留資格に適合しているかも再確認し、必要に応じて変更手続きを行うと不法就労のリスクを避けられます。
外国人労働者への「更新手続き」アラートを出すフローなども、合わせて整えておくとより安心です。
試用期間中の対応
試用期間中に正しく評価する
試用期間中には、外国人労働者が業務に適応できているか、適切に評価することが求められます。評価ポイントは、専門的なスキルのほか、コミュニケーション能力やチームへの適応力などを総合的に評価して判断します。
評価時点で課題があったとしても、その課題をクリアしようと努力しているか、課題解決に前向きに臨んでいるかも見てあげるようにしましょう。
また、日本の業務文化や規律に順応できているかも判断しなくてはいけません。試用期間中に適切なフィードバックを行うことで、労働者が業務にスムーズに馴染む手助けとなります。
本採用への移行プロセスを明確にする
試用期間が終了した後、外国人労働者の本採用に移行する際には、細心の注意が必要です。
まず労働条件や待遇の詳細を再確認し、労働条件の変更があればその内容を明確に説明し、必要に応じて契約書を再度作成します。双方の認識に不一致があるとトラブルを引き起こしかねません。
さらに本採用時には、在留資格や在留期間に問題がないか再確認するようにしましょう。
文化・言語の違いへの対応不足がないか
異文化理解とコミュニケーション戦略
職場での文化の違いによる摩擦を減らすためには、互いの文化的背景を理解し、適切なコミュニケーションが図れるような工夫が必要です。上長やメンターとの定期的な面談によって外国人労働者の課題や問題を把握し、どうすれば解決するかを一緒に考えていきましょう。
一方的にフィードバックをするのではなく、外国人ならではの戸惑いや不安をヒアリングして、本人の意見や要望をしっかり受け止めたうえで解決策を講じることが、非常に大事です。
日本語研修にも盲点あり
日本語研修は、外国人労働者が職場でのコミュニケーションを円滑化する上で必要不可欠なものです。
日常会話だけでなく基本的なビジネス用語や業務に必要な専門用語を学ぶことで、外国人労働者が自信をもって仕事ができるようになります。その結果、円滑に業務が進められるようになるはずです。
ただし社員が日本語を教える場合には、少しだけ気を付けてほしいポイントがあります。日本人だからと言って正しく日本語を理解できているとは限りません。間違った日本語で外国人社員を混乱させないよう、教える側の日本語リテラシーも精査することをおすすめします。
外国人労働者に向け「日本語研修」というアウトプットをすることで、副産物的に日本人社員の日本語力が向上する可能性もあるのではないでしょうか。
法令遵守は日本人も外国人も同じ
労働基準法の遵守
法定労働時間、残業、休暇の管理については、日本人労働者同様の基準が適用されます。「外国人だからこれくらいはいいか」という思考は危険です。区別は差別につながることを意識するようにしてください。
過度な残業や不当な労働条件を適用していないかコンプライアンスの観点で再確認し、適切な労働環境を提供することが法令遵守の基盤となります。
外国人労働者に関する特別な法規制
外国人労働者を雇用している企業には、雇用状況を定期的にハローワークに届け出ることが義務付けられています。これは日本人労働者にはない法規制です。
届け出た内容と労働の実態が異なる場合、企業に罰則が科せられる恐れがありますので、必ず守りましょう。
外国人労働者が安心して日本で働き、生活する権利を守る責任が事業者にはあるということを意識すれば、コンプライアンス面で問題が生じることはないはずです。
外国人雇用を成功させるためのポイント
外国人を雇用するためには多くの労力がかかっていますので、なるべく長い期間働いてもらえるのが理想です。
そこで外国人労働者が職場で活躍し、会社に定着するためにはどのような工夫が必要なのか、いくつかのポイントに分けて説明していきましょう。
多文化共生の職場作り
外国人労働者、日本人従業員ともに、異文化理解を深める「異文化トレーニング」を実施。無関心からよいコミュニケーションは生まれませんので、まずはお互いの文化や慣習を知って理解する試みを実施していくようにします。
言語表現の違いや仕事に対する姿勢、宗教や生活習慣についての基本的な知識を学ぶことで相互理解が進み、職場内の摩擦も軽減されるはずです。
一方的に教えるのではなく、日本人と外国人がそれぞれ「教え合う」姿勢が重要です。知った先に生まれる疑問や驚きを共有することで、相手を深く知ることの意義を感じるようになります。
インクルーシブな職場環境の構築
外国人労働者が疎外感を感じず、安心して働ける環境づくりを成功させるカギは、「インクルーシブな職場環境」の構築です。インクルーシブな職場環境とは、性別や年齢、国籍、障害、性的指向などの違いに左右されることなく、すべての従業員が尊重され、能力を発揮して活躍できる職場のこと。
多様性の尊重と受容をベースにお互いを尊重できるインクルーシブな職場であれば、心理的にも職務的にも安心して活躍できます。その結果、会社や事業所への帰属意識を高めていくことにもつながるのです。
外国人労働者へのサポート体制を充実させる
メンター制度の導入
外国人労働者が速やかに職場環境に適応するために有効なのは、初めからメンター制度を導入する方法です。
メンターは職務上の指導だけでなく、文化や言語における壁を感じやすい場面などでもサポート、労働者が困難に直面した際にいつでも相談できる存在になることが求められます。
心のよりどころにもなるメンターを通じて、外国人労働者が孤立することなく安心して業務に取り組むことができるようになれば、会社や事業所への定着にも貢献します。
継続的なキャリア支援
外国人労働者が長期的に成長できる環境を提供するためには、継続的なキャリア支援も欠かせません。具体的には、職務スキルや語学力向上のための研修プログラム、キャリアパスの明確化などが挙げられます。
また定期的なキャリア面談などで目標設定と評価の機会を設けることで、外国人労働者が自己成長を実感しやすくなります。できればメンバー内で目標を共有し、達成できたときにみんなで祝ってあげるなどするとよいと思います。
外国人材の定着率を高めるコツ
モチベーションが維持できる仕組みをつくる
外国人労働者の定着率を高めるためには、モチベーションの維持を可能にする仕組みをつくることが大事です。業務成果に応じた適切な報酬制度や、定期的なフィードバック、成果を発表する機会を設けるといった工夫をしてみましょう。
成長機会を提供し続ける
外国人労働者向けに、社内外の研修や資格取得支援制度を導入することで、彼らの成長意欲を促すことができます。企業が成長機会を提供することで、労働者は自分の可能性を実感でき、会社への帰属意識も高まります。
このほかにも、外国人スタッフの能力を活かしたプロジェクトの発足や、グローバル展開をサポートする役割などを提供することで、労働者のスキル向上と企業の成長が同時に実現できるのではないでしょうか。
外国人雇用に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、外国人雇用に関する「よくある質問」に対する回答をまとめてみました。
- 在留資格の申請や変更を行うところはどこですか?
- 在留資格の新規申請や変更手続きは、出入国在留管理庁の「地方出入国在留管理官署またはインフォメーションセンター」で行います。就労する外国人労働者本人が窓口で行うか、オンラインのいずれかで申請するのが原則です。
外国人労働者本人が申請するのは不安という場合、法定代理人や雇用する企業の担当者などが代理人として手続きすることもできます。
- 在留資格の確認方法は?
- 外国人労働者の在留資格を確認する際には、在留カードを参照します。記載されている在留資格が雇用予定の業務内容に適しているかを確認しましょう。法的な確認義務としても、在留資格と在留期間の確認は必須です。
- 日本国内の別の会社で働いていた外国人労働者を雇用する場合、どのような手続きが必要?
- 日本国内の別の企業で就労していた外国人労働者を雇用する場合、原則として在留資格の再申請や変更が必要です。特に、前職の業務内容と新しい業務内容が異なる場合や、現行の在留資格が適用されない場合は、出入国在留管理庁での変更手続きが必要なので注意しましょう。
- 外国人労働者を雇用した場合、在留資格の申請以外に行う手続きは?
- 外国人労働者の在留資格の確認や申請以外にも、企業としては法的に行うべき義務がいくつかあります。
1.外国人雇用状況届出書の提出:雇用開始から2週間以内に「外国人雇用状況届出書」をハローワークに提出
2.社会保険・労働保険の加入:週の労働時間や契約期間に応じて加入必須
3.健康診断や労働環境の整備:年1回の健康診断、ハラスメント防止対策、労働時間の管理などを徹底
4.在留資格の更新や有効期限(在留期間満了日)の管理:外国人労働者の在留資格の有効期限を管理し、更新時期が近づいたら速やかに更新手続きを行う。
参照元:厚生労働省「外国人雇用はルールを守って適正に」【PDF】(https://www.mhlw.go.jp/content/001261967.pdf)
外国人雇用に必須の在留資格管理でミスを起こさないために
外国人労働者が日本で就労するには、適切な在留資格の取得が前提です。在留資格の不備や無資格での就労が発覚した場合、企業には罰則が科される可能性があります。従業員が持つ在留資格と職務内容が適合しているか、雇用する前に必ず確認しましょう。
また雇用後も、在留カードに記載されている在留資格や在留期間を企業や事業者が管理することによって、不法就労になってしまうリスクを防げます。
東京23区二十歳の6人に1人が外国人、新宿区などは2人に1人が外国人というニュースで驚いた方も多いと思いますが、外国人労働者の増加に伴い、日本政府は在留資格に関する規制や就労制度の改正を進めています。
2027年4月1日施行される「育成就労制度」などの法改正に適切に対応し、新たなトレンドや制度に沿った雇用体制を整える必要があります。
外国人労働者の雇用は、企業にとっても新たな成長の機会です。適切な在留資格の管理および異文化対応などのサポートを行い、外国人労働者が長期的に活躍できる職場環境を整えられるよう、準備を進めましょう。

