特定技能「宿泊」とは?概要について説明
特定技能制度とは?宿泊業でも活用できる外国人材受け制度
2019年4月、深刻化する人手不足に対応するため、新たな在留資格「特定技能」が導入されました。この制度により、特定の技能を持つ外国人が日本の労働市場で即戦力として働くことが可能になりました。
特定技能の対象となる分野は12種類あり、宿泊業もその一つです。特定技能「宿泊」を取得した外国人は、フロント業務や接客業務に加え、ベッドメイキングや配膳、館内販売などの単純作業にも従事できます。
宿泊分野における特定技能1号と2号の違い
「特定技能」は1号と2号に分類されます。
- 特定技能1号:宿泊業務に必要な知識や技能を持つ外国人が対象。在留期間は最長5年で、家族の帯同は認められません。技能評価試験と日本語試験の合格が必要です。
- 特定技能2号:より高度な技能を持つ外国人が対象で、宿泊分野は2023年6月から対象に追加されました。在留期間の上限はなく、家族の帯同が可能です。受験資格として、試験合格と2年以上の実務経験が求められます。
宿泊業界で外国人材が求められる理由とは?
ホテル業界で外国人従業員の採用が求められる背景には、「人手不足の深刻化」「労働環境の厳しさ」「インバウンド需要の増加」の3つの要因があります。帝国データバンクの調査では、2024年のホテル・旅館業界の人手不足率が正社員で62.9%、非正社員で60.9%と高い水準に達しており、慢性的な人手不足が課題となっています。
また、低賃金や長時間労働などの厳しい労働環境が日本人の離職率を高める一因となっています。さらに、日本政府観光局の統計によると、2019年に3,188万人だった訪日外国人は、2023年には3,600万人まで回復し、今後さらなる増加が予想されます。
このような状況から、多言語対応を強化するために外国人スタッフの採用が不可欠となっています。こうした背景を踏まえ、特定技能「宿泊」の活用がホテル業界における持続的な人材確保の重要な手段となっています。
※参照元:帝国データバンク:https://www.tdb.co.jp/report/economic/20241113-laborshortage202410/
※参照元:日本政府観光局:https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/?utm_source=chatgpt.com
※参照元:厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37084.html?utm_source=chatgpt.com
特定技能「宿泊」の業務内容とは?
フロント業務|宿泊施設の顔として活躍できる仕事
フロント業務は、宿泊施設の第一印象を決める重要な業務です。外国人スタッフは、チェックイン・チェックアウト対応や予約管理に加え、観光案内や多言語対応を行うことで、ゲストの満足度を向上させることができます。
レストラン業務|食事の時間を快適にするサービス
レストラン業務では、注文対応や配膳・片付け、料理の盛り付け補助を担当します。特に訪日外国人観光客が増加する中で、多言語での接客ができる外国人スタッフの役割は非常に大きくなっています。
客室清掃や付随業務|快適な宿泊環境を提供する重要な仕事
客室清掃は、宿泊客が快適に過ごすために欠かせない業務です。ベッドメイキングやアメニティ補充、バスルームの清掃を丁寧に行うことで、ホテルの品質向上につながります。
また、特定技能「宿泊」の外国人は、客室清掃や備品補充、レストランの配膳、荷物運搬、館内販売といった主業務に関連する単純作業にも従事可能ですが、あくまで補助としての範囲に限られ、単独での業務は認められていません。
特定技能「宿泊」でできない仕事とは?要注意ポイント
特定技能「宿泊」では、宿泊業に関連する業務のみが認められており、調理業務や施設管理・営繕作業には従事できません。
調理業務は「特定技能・外食業」の対象となるため、宿泊業では認められず、設備保守や修理、建物管理といった専門技術を要する業務も宿泊業務の範囲外とされています。
これらの業務を必要とする場合は、別の在留資格を持つ人材の採用を検討する必要があります。
特定技能「宿泊」の外国人材を受け入れる際の注意点
旅館業法に基づく営業許可
宿泊業で特定技能外国人を受け入れるためには、旅館業法に基づく営業許可を取得する必要があります。この許可を持たない簡易宿所や下宿業では、特定技能外国人を雇用することはできません。
許可を取得するには、施設が一定の衛生基準・設備基準を満たし、地方自治体の規定に適合する必要があります。
外国人労働者受け入れのための基準(給与・待遇の適正性)
外国人労働者を適正に受け入れるため、企業は次の条件を満たす必要があります。
- 日本人と同等以上の給与を支払う:外国人労働者に対し、不当に低い給与を設定することは禁止されています。
- 社会保険の加入:健康保険、厚生年金、労働保険など、適切な社会保険制度に加入させる必要があります。
- 労働法規の遵守:労働基準法や出入国管理法を遵守し、適切な雇用管理を行うことが求められます。
宿泊分野特定技能協議会への加入
特定技能外国人を受け入れる企業は、「宿泊分野特定技能協議会」への加入が義務付けられています。この協議会は、外国人労働者の適正な受け入れを確保し、業界全体の水準向上を目的としています。
企業は協議会に加入することで、受け入れに関する最新情報を得ることができ、業界のガイドラインに沿った適切な運用を行うことができます。さらに、企業が特定技能外国人の適正な雇用を維持するために必要なサポートや相談窓口も設置されています。
受け入れ企業が行う支援の義務(生活支援、相談窓口の設置など)
企業は特定技能外国人が日本で円滑に生活し業務を遂行できるよう、生活オリエンテーションの実施を通じて日本の生活習慣や宿泊業のルールを説明し、異文化適応をサポートします。
また、業務や生活面の課題を解決するための相談窓口を設置し、迅速な対応を行うことが求められます。加えて、外国人労働者が安心して居住できるよう、住宅確保の支援を提供し、適切な住居の契約や仲介をサポート。
さらに、日本語学習支援を実施し、業務遂行や日常生活でのコミュニケーション能力向上を促します。これらの支援を整えることで、外国人労働者が長期的に安定して働き続けられる環境を確保し、雇用関係の維持と宿泊業界の人手不足解消につなげることが可能です。
当サイトでは、外国人材の雇用を検討しているホテル・宿泊業の施設運営に関わる法人向けに、国内ホテルでの成功事例・複雑な制度や手続きの解説・宿泊業に特化した外国人材紹介サービス(人材紹介会社)の比較などのコンテンツを掲載していますので、是非お役立てください。
Global Talent Station