宿泊業界では、新型コロナウイルスの影響による観光需要の変動、労働人口の減少、長時間労働のイメージなどが要因となり、国内の労働者だけでは十分な人材確保が難しくなってきました。そんな中、特定技能1号の在留資格を持つ外国人材の採用が注目されています。
特定技能1号を活用すれば、即戦力となる外国人人材を確保でき、業務の効率化やサービスの向上が期待できます。本記事では、特定技能1号「宿泊」の概要や試験情報、採用方法、費用などを詳しく解説します。
特定技能1号「宿泊」とは?
特定技能1号は、日本の宿泊業界で即戦力として働くための在留資格です。宿泊業に必要な基本的な業務スキルと日本語能力を有することが求められます。
特定技能2号との違い
特定技能には「1号」と「2号」の2種類があります。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 技能水準 | 即戦力として必要な知識・経験 | 熟練した技能が必要、従業員への指導が可能 |
| 在留期間 | 最長5年まで | 上限なし(更新可能) |
| 家族帯同 | 基本的に不可 | 要件を満たせば可能 |
| 永住許可申請 | 不可 | 要件を満たせば可能 |
| 日本語能力 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認 | 試験での確認は原則不要 |
| 支援体制 | 企業による支援が必要 | 支援は不要 |
特定技能1号は、宿泊業において即戦力となる外国人材に適用される在留資格です。基本的な業務を遂行できる知識や経験が求められ、在留期間は最長5年となります。
企業による支援が必要であり、日本語能力試験の合格が条件となる場合もあります。家族帯同や永住許可申請はできませんが、宿泊業の現場で経験を積み、将来的に2号への移行を目指すことも可能です。
※参照元:【PDF】法務省「特定技能ガイドブック」https://www.moj.go.jp/content/001326468.pdf
宿泊業における特定技能1号の対象業務
特定技能1号の資格を持つ外国人は、宿泊業の次の業務に従事できます。
- フロント業務(チェックイン・チェックアウト、観光案内)
- 予約受付(電話・メール対応、顧客管理)
- 接客業務(館内案内、問い合わせ対応)
- レストランサービス(配膳、片付け、簡単な調理補助)
- 客室清掃(ベッドメイキング、アメニティ補充)
※参照元:【PDF】国土交通省「-宿泊分野の基準について」:https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001738392.pdf
雇用条件と受け入れのポイント
特定技能1号の外国人人材を採用する際、企業は次の条件を満たし、適切な管理体制を整える必要があります。
- 在留期間:1回につき最長1年(更新可能、通算5年まで)。長期雇用を見据えた人材計画が必要です。
- 日本語能力要件:日本語能力試験(JLPT)N4以上、または同等の日本語スキル。業務内容に応じて実際の日本語レベルを事前確認することが重要です。
- 雇用条件の整備:特定技能外国人の待遇は日本人と同等以上である必要があり、最低賃金を下回らないことが求められます。
- 労務管理と受け入れ体制の確保:労働時間や休日管理を徹底し、適切な職場環境を整備する必要があります。
- 宿泊分野特定技能協議会への加入:採用後4か月以内に協議会へ加入し、継続的な情報共有と指導を受けることが必須です。
※参照元:【PDF】法務省「特定技能ガイドブック」https://www.moj.go.jp/content/001326468.pdf
【試験情報】宿泊分野 特定技能1号試験について
特定技能1号を取得するには、宿泊業技能測定試験の合格が必要です。この試験では、宿泊業の知識や技能、日本語能力が問われます。
企業が試験情報を把握することで、適切な人材を見極め、即戦力となる外国人を採用しやすくなります。また、試験内容を理解していれば、候補者のスキルを的確に評価でき、効果的な採用戦略を立てることが可能です。
- 試験名:宿泊業技能測定試験
- 試験内容:宿泊業の基本知識・技能(フロント業務、接客、清掃、広報・企画、安全衛生など)
- 日本語能力試験:(N4相当以上)
- 試験実施機関:宿泊業技能試験センター
- 試験実施国:日本、インドネシア、ネパール、フィリピン、スリランカ、ベトナム、ミャンマーなど
- 合格率:50〜70%と比較的高め。基礎知識と日本語能力を備えていれば十分合格可能。
特定技能1号の外国人人材を採用する方法
直接採用
直接採用は、企業が自社で募集を行い、特定技能1号取得者を採用する方法です。人材紹介会社を利用しないため、成功報酬を支払う必要がなく、長期的に採用コストを抑えられます。
「コストを最小限に抑えたい」「自社でしっかり選考したい」「すでに外国人材を雇用したことがあり、受け入れ体制が整っている」といった企業は直接採用がいいでしょう。
一方で、在留資格の申請手続きや特定技能試験合格者の確保、労働条件の整備など、企業が対応すべき業務が増えるため、時間と労力がかかります。また、求職者の母数が限られるため、採用活動の難易度が高くなる点に注意が必要です。
人材紹介会社を活用
人材紹介会社を利用すると、採用の手間を軽減し、短期間での人材確保が可能です。特定技能試験の合格者リストから即戦力となる人材を紹介してもらえ、在留資格やビザ申請の手続きもサポートされます。
短期間で確実に採用したい場合や、特定技能試験の合格者情報を得たい企業に適しています。また、採用の手間を減らし、手続きミスを防ぎたい企業や、外国人の生活支援や日本語教育の負担を減らしたい場合にも有効です。
紹介手数料は固定料金または年収の20%~30%が一般的で、費用は10~30万円/人程度発生します。多くは成果報酬型ですが、自社採用では広告費などのコストがかかるため、採用方法を慎重に検討する必要があります。
まとめ
宿泊業界の人手不足対策として、特定技能1号の外国人人材の採用は有効な手段です。外国人材の活用により、フロント業務や客室清掃、レストランサービスなど幅広い業務をカバーでき、業務の円滑化やサービス向上にも貢献します。
適切な採用方法を選ぶには、自社の課題を明確にすることが重要です。コストを抑え、自社の基準で選考を行いたい場合は直接採用が適しています。特に、すでに外国人スタッフを雇用し、受け入れ体制が整っている企業に向いています。
一方、短期間で確実に人材を確保し、ビザ申請や生活支援の手間を軽減したい企業には、人材紹介会社の活用が適しています。特定技能試験の合格者情報を得たい、採用の手間を減らしたい場合にも有効です。自社の状況に応じた最適な採用方法を選びましょう。
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