特定技能の「宿泊業」と「外食業」の違いが気になるものの、どちらが自社に合っているのか分からず悩んでいませんか?このページでは、具体的な業務範囲や求められるスキル、採用のしやすさを比較し、それぞれの特徴を詳しく解説します。
また、特定技能と技能実習の違いを整理し、どの制度を活用すべきかの判断基準もご紹介します。宿泊業の採用担当者が自信を持って最適な選択ができるよう、分かりやすく情報をまとめました。
特定技能と技能実習の違いを比較!どちらを選ぶべき?
特定技能:即戦力の外国人材を雇用できる制度
特定技能は、日本の労働力不足を補うために設けられた在留資格です。宿泊業や外食業を含む14業種で受け入れが可能で、特定技能1号の場合は最長5年間の就労が認められています。
試験に合格するか、技能実習2号を修了することで取得できます。転職が可能であり、即戦力として活躍できるのが大きな特徴です。
技能実習:発展途上国の人材育成を目的とした制度
技能実習は、外国人が日本で技術を学び、自国の発展に貢献することを目的とした制度です。原則として転職はできず、最長5年間の在留が認められています。
外食業は対象外であり、宿泊業では技能実習2号以降での受け入れが可能です。日本語能力にバラつきがあり、即戦力としての活用は難しい場合があります。
特定技能は労働力確保が目的、技能実習は人材育成が目的
特定技能は企業が即戦力を確保するための制度であり、技能実習は国際貢献の一環として設けられたものです。特定技能では、日本語能力や専門的な試験に合格した外国人が、即戦力として業務に従事できます。
一方、技能実習は本国への技術移転を目的としており、教育や育成の要素が強く、即戦力にはなりにくい特徴があります。宿泊業の採用担当者にとって、長期的に安定した労働力を確保し、人材不足を解消するなら、特定技能の活用がより適しているでしょう。
特定技能とは?概要と取得方法を詳しく解説
特定技能1号は、一定の技能と日本語能力(N4以上)を持つ外国人が最長5年間働くことができる在留資格です。外食業や宿泊業をはじめとする14業種が対象となっています。
宿泊業の特定技能対象業務
宿泊業の特定技能外国人は、次の業務に従事できます。
- フロント業務(チェックイン・チェックアウト対応、予約管理)
- レストランサービス(配膳・接客)
- 客室清掃、施設管理
- 広報・企画業務
特定技能の取得方法
特定技能の在留資格を取得するには、宿泊業技能測定試験と日本語試験(N4以上)に合格するか、技能実習2号を良好に修了する必要があります。宿泊業技能測定試験では、宿泊業務に関する専門知識や接客スキルを評価され、日本語試験では日常会話レベルの日本語能力が求められます。
一方、技能実習2号を修了した場合は試験を免除されるため、これまでの実務経験が活かせる形で特定技能へ移行できます。どちらの方法を選ぶ場合も、企業側が在留資格取得の手続きを適切にサポートすることが求められます。
特定技能のメリット
特定技能を活用することで、宿泊業では即戦力となる人材を確保でき、経験を積んだ外国人材が柔軟に転職できるため、優秀な人材が流動しやすくなります。
さらに、特定技能2号への移行が可能になれば、長期雇用が実現し、安定的なスタッフ配置が可能になります。人材不足が深刻な宿泊業において、採用競争を勝ち抜くためには、特定技能の活用が不可欠です。
技能実習とは?
技能実習は、日本の技術を学び、自国へ持ち帰ることを目的とした制度です。
宿泊業の技能実習生ができる業務
技能実習2号を修了した外国人は、次の業務に従事できます。
- フロント業務(補助的業務が中心)
- レストランサービス(接客補助、簡単な調理補助)
- 客室清掃、施設内の基本的な管理業務
技能実習のメリット
技能実習制度は、外国人が日本の宿泊業の現場で技術を学びながら働けるため、一定のスキルと経験を積むことができる点がメリットです。特に、長期間の育成を目的とする企業にとっては、安定的な人材を確保しやすくなります。
また、制度として本国への技術移転が前提となっているため、国際貢献の観点からも活用が期待できます。しかし、転職が認められていないことや在留期間の制限、日本語能力にバラつきがある点から、宿泊業で即戦力を求める企業には、より特定技能の活用が適している場合があります。
宿泊業と外食業の特定技能の違い
| 項目 | 宿泊業(特定技能) | 外食業(特定技能) |
|---|---|---|
| 業務範囲 | フロント業務、レストランサービス、客室清掃、施設管理など幅広い業務が可能 | ホール業務、調理、店舗管理が中心で、接客や衛生管理が重視される |
| 試験内容 | 宿泊業技能測定試験(接客・サービス中心) | 外食業技能測定試験(調理・衛生管理中心) |
| 採用の難易度 | 採用競争が激しく、特にフロント業務は一定の日本語力が求められる | 比較的採用しやすく、未経験でも学びながら成長できる環境が多い |
| 長期雇用の可能性 | 特定技能2号に移行すれば無期限での就労が可能 | 2023年から特定技能2号の対象となり、長期雇用の道が開かれた |
外食業・宿泊業における
特定技能の取得条件と試験制度
特定技能の取得には、次の条件を満たす必要があります。
- 年齢要件:18歳以上であること
- 学歴要件:特になし
- 試験合格要件:技能水準試験および日本語能力試験(N4以上)の合格が必要
- 外食業(技能水準試験の実施機関):一般社団法人外国人食品産業技能評価機構
- 宿泊業(技能水準試験の実施機関):一般社団法人 宿泊業技能試験センター
これらの試験をクリアすることで、特定技能としての在留資格が取得可能となります。
外食業・宿泊業の雇用主が遵守すべき条件
特定技能の外国人材を受け入れる企業には、いくつかの義務が課されます。
外食業・宿泊業における支援計画の作成
受け入れ機関(雇用主)は、特定技能外国人が日本で円滑に生活・業務を行えるよう、支援計画を作成・実施する必要があります。支援内容には、次のような項目が含まれます。
- 事前ガイダンスの実施
- 出入国時の送迎
- 住居確保および生活支援
- 日本語学習機会の提供
- 定期的な面談・相談対応
登録支援機関に業務を委託することで、これらの支援業務を外部委託することも可能です。
外食業・宿泊業における適正な雇用契約
特定技能外国人の雇用にあたり、雇用契約は以下の条件を満たす必要があります。
- 直接雇用であること(派遣契約は不可)
- 労働基準法に則った勤務時間設定
- 日本人と同等以上の報酬水準
宿泊施設のレストランは宿泊業と外食業のどちらが適切か?
ホテルのレストランで特定技能外国人を受け入れる際、どの分野が適切かは経営主体によります。ホテル直営のレストランであれば、「宿泊分野」と「外食業分野」のどちらでも受け入れが可能です。
一方、テナントとして独立したレストランが運営している場合は、「外食業分野」でのみ受け入れが可能となります。採用時には、業務内容だけでなく、経営主体を考慮しながら適切な分野を選択することが重要です。
特定技能を活用した外国人の就業成功例
ベトナム出身のV君は、日本の日本語学校を卒業後、資格外活動許可を得て焼鳥店でアルバイトをしていました。卒業を控えた時点で、店舗経営者から正社員としての雇用を提案され、特定技能1号の取得を決意しました。
V君はすでに日本語能力試験N3に合格しており、外食業技能測定試験にも合格。経営者は登録支援機関と契約し、宿泊分野特定技能協議会にも加入。
出入国在留管理局へ「留学」から「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行い、約1か月後に許可され、正社員として正式に採用されました。
※参照元:就労ビザ申請サポート大阪:https://shuurou-visa.com/tokuteigino.html
まとめ
特定技能は即戦力として活躍でき、長期雇用が可能ですが、宿泊業では採用競争が激しく、人材確保が課題となっています。一方、技能実習は人材育成が目的であり、転職が不可なため即戦力としては不向きです。
また、ホテルのレストランで特定技能外国人を受け入れる際、宿泊業か外食業のどちらを選ぶべきかは、経営主体と採用目的によります。ホテル直営ならどちらの分野でも受け入れ可能ですが、テナント型なら外食業に限定されます。
即戦力を求め、採用競争に勝つためには、適切な分野を選び、特定技能を最大限活用することが重要です。
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