介護業界で外国人スタッフを雇用する際は、日本の労働関係法令や出入国管理法に基づいた労働時間の決め方を正しく理解しておくことが不可欠です。
ここでは、外国人スタッフの雇用における労働時間の関連法令やポイントを解説します。
雇用管理者のための労働関係法令のポイント
日本には労働基準法がありますが、外国人スタッフを雇用する場合もこの法律が適用されます。労働基準法で定められている労働時間と休日の主なルールは以下の内容です。
- 労働時間は1日8時間、1週間40時間を上限とすること
- 少なくとも1週間に1日、または4週間を通じて4日以上の休日を与えること
- この労働時間の上限を超える、あるいは休日に働かせる場合は、あらかじめ労使協定(36協定)を結んだうえで所轄労働基準監督署に届け出ること
ただし、事業所の業務量や繁忙期と閑散期など状況を鑑みて変則的な労働時間を設定する変形労働時間制を採用する場合は、1日8時間、1週間40時間の上限を超えても構いません。
そして36協定とは、労働基準法で定められた労働時間を超えた労働や休日労働をスタッフにさせる場合、事前に事業主とスタッフ間で書面で締結するルールのことです。
36協定を結ぶ場合、主に以下の点を雇用契約書の書面に盛り込みます。
- 時間外労働は1日あたり、ひと月あたり、年間でそれぞれ何時間までなのか
- 時間外労働をさせる業務の種類とスタッフの人数
- 時間外労働をさせる具体的な理由はなにか
ただし、36協定を結べば無制限に時間外労働をさせられるわけではありません。
36協定を結んでも時間外労働と休日労働の合計が1ヶ月100時間未満であることや、その合計が2ヶ月平均、3ヶ月平均など複数月の平均がひと月あたり80時間以内に収めることが決められています。
これは変形労働時間制を採用する場合も同じですのでご注意ください。
また労働時間と併せて、勤務中の休憩時間のルールも把握しておきましょう。
(1日の労働時間が6時間超の場合…45分以上、8時間超の場合…1時間以上)
参照元1(PDF):厚生労働省 労働基準法の基礎知識(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/150312-1.pdf)
参照元2:日本労働組合総連合会(https://www.jtuc-rengo.or.jp/shuppan/roudou/roudou/data/2021_36kyoteihandbook/html5.html#page=7)
出入国管理法に基づく労働時間の制限と注意点
外国人スタッフを雇用する際には、出入国管理法にも注意しなければなりません。なぜなら、外国人スタッフが持つ在留資格の種類によって、従事できる労働の範囲や時間に制限があるからです。
資格外活動の許可
外国人スタッフが本来の在留資格で認められている活動以外の仕事を行う場合、必要な許可が「資格外活動の許可」です。
たとえば、介護福祉士養成校に通う留学生を在学中に介護施設でアルバイトとして雇う場合、資格外活動の許可が必要となります。
資格外活動の許可を持つアルバイトの外国人スタッフの労働時間は、週28時間以内が上限です。
注意したいのは、「週28時間以内」は特定の曜日にその週の累計労働時間がリセットされるものではなく、どの曜日を起算日としても週28時間以内に収めるということ。
たとえば「水曜日を起算日としたら、翌週火曜日(7日目)までの労働時間が28時間以内」となるように考慮しなければなりません。
ただし、夏休みや冬休みなど長期休暇の時期は、その期間中のみ1日8時間までの労働が認められています(「留学」の在留資格を持つ外国人スタッフに限る)。
資格外活動の許可を得ずに労働させると、事業主が不法就労助長罪に問われる可能性があるためご注意ください。
参照元:特定技能インフォ(https://www.adecco.co.jp/client/tokuteiginou_info/20240900_47_koyou.shtml)
※不法就労助長罪…外国人を不法に就労させる、あるいは斡旋した人物に対して科す罰則。
3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される。
過失であっても処罰対象とみなされる可能性あり。
参照元(PDF):出入国在留管理庁(https://www.moj.go.jp/isa/content/001349112.pdf)
技能実習制度における労働時間
技能実習制度を利用して外国人スタッフを雇用する場合、事業主は管理団体の指導のもとでスタッフごとの実習計画を作成します。
この実習計画で定める労働時間や休日は労働基準法に則ったルールと同じで、原則として時間外労働や休日労働、深夜労働は想定されていません。
しかし、やむを得ない業務上の理由で時間外労働や休日労働、深夜労働を外国人スタッフにさせる場合は、実習計画の変更認定または届出の申請が必要です。
変更または届け出る場合でも、時間外労働時間の上限は労働基準法と同じなので、必ず守るようにしてください。
まとめ
外国人スタッフを雇用する際には、労働基準法や出入国管理法を遵守した労働時間や休日などを決めることが重要です。特に出入国管理法に基づく労働時間の決め方は、日本人スタッフしかいない介護施設では馴染みがほぼないため、確認が漏れてしまう可能性があります。
気づかないうちに法令違反をしてしまわないように、外国人スタッフの雇用を検討している介護事業主はぜひチェックしましょう。
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