介護業界では慢性的な人手不足が続いており、国内人材の確保が難しくなっています。その課題解決策の一つとして近年増えているのが、外国人の採用です。特に在留資格「介護」を取得した外国人は、長期間にわたり活躍できる人材です。
ここでは、在留資格「介護」の概要や取得条件、採用方法などをご紹介します。
外国人の在留資格「介護」の基本情報
在留資格「介護」は、専門的・技術的分野の外国人の受け入れを目的に作られました。
この資格が作られた背景には、介護業界の深刻な人手不足があります。
厚生労働省が2015年6月に公表した調査結果によると、2025年度の介護人材の需要見込みが253.0万人だったのに対し、実際供給できると見込んだのは215.2万人でした(※1)。
供給見込みの人材の数は2015年当時の状況が維持された場合の推定だったそうですが、直近のデータを見てみると、2024年度の介護職員数は約212.6万人でした(※2)。
つまり、2015年当時の推測より介護業界の人手不足は深刻化しているのです。
(※1)参照元:厚生労働省 2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000088998.html)
(※2)参照元:厚生労働省 介護職員数の推移の更新(令和5年分)について(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47882.html)
在留資格「介護」の取得条件とは
在留資格「介護」を取得する条件は以下のとおりです。
- 介護福祉士国家試験に合格していること
- 介護福祉士として働くこと
- 日本国内の介護施設と雇用契約を結んでいること
- 日本人の介護スタッフと同額以上の報酬を受けること
上記の条件を満たさない外国人は在留資格「介護」が取得できません。
外国人介護人材の在留資格「介護」取得方法
実務経験からの取得方法
技能実習生などの在留資格で日本に入国後、介護施設などで3年以上就労や研修を行う方法です。3年以上経過後に介護福祉士の国家試験を受けて合格すると、介護福祉士の資格と併せて在留資格を「介護」に変更・取得できます。
養成学校を活用した取得方法
外国人留学生として日本に入国後、介護福祉士の養成課程がある大学、短期大学、専門学校などで2年以上学ぶ方法です。その後は介護福祉士の国家試験を受けて合格すると、介護福祉士の資格と併せて在留資格を「介護」に変更・取得できます。
EPA介護福祉士候補生
EPAとは、インドネシア、フィリピン、ベトナムから入国する外国人が介護福祉士候補生として特定活動を行う方法です。
介護福祉士養成校で2年以上学ぶ、あるいは介護施設などで3年以上就労や研修を行い、その後介護福祉士の国家試験に合格する流れは変わりません。
ただし、介護福祉士養成校で学べるのはフィリピン、ベトナムの2ヶ国の介護福祉士候補生のみです。
参照元(PDF):厚生労働省 外国人介護人材受入れの仕組み(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000994004.pdf)
外国人介護福祉士の合格率はどれくらい?
受験者数と実績をチェック
2024年1月に実施された第36回介護福祉士国家試験のEPA介護福祉士候補生の受験者数は521名、合格者数は228名、合格率は43.8%でした。
また合格者数のうち、初受験で合格した受験者数は155名(87.1%)、再受験で合格した受験者数は73名(21.3%)です(※1)。
なお、日本人を含めた受験者数全体での合格率は82.8%(※2)ということを踏まえると、EPA介護福祉士候補生にとって介護福祉士の国家試験がいかに難関なのかが分かるでしょう。
(※2)参照元(PDF):第36回介護福祉士国家試験合格発表(https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/001230243.pdf)
在留資格「介護」に該当する人材の採用方法
在留資格「介護」を持つ外国人を採用するには、以下の方法が一般的です。
- 介護福祉士養成校に通う留学生をアルバイト生や実習生として受け入れ、国家試験合格後に採用する
- EPA介護福祉士候補生を受け入れ、国家試験合格後に採用する
- 特定技能や技能実習の在留資格者を受け入れ、国家試験合格後に採用する
- 人材紹介会社に紹介してもらう
- ハローワーク、外国人専門の求人サービスなどを利用する
特定技能や技能実習の外国人は5年の滞在期限があるため、受け入れても期限までに国家試験に合格しなかった場合は帰国しなければなりません。
在留資格「介護」と
他のビザの違いを比較
介護業界で従事できる在留資格には「介護」以外にEPA介護福祉士、特定技能、技能実習があります。
それぞれの違いを比較してみましょう。
| 制度名 | EPA |
| 資格要件 | 資格なし ※資格取得が目的 |
| 就労可能期間 | 永続的な就労可能 ※資格取得が条件 |
| 母国での資格・学習経験 | 看護系学校の卒業生 or 母国政府より介護士に 認定 |
| 日本語能力要件 | N3程度 ※入国時はN5~N3 |
| 受入調整機関の支援 | あり ※JICWELSによる 受入調整 |
| 就労可能なサービス | 制限あり ※一定条件を満たせば 訪問系サービスも可 |
| 制度名 | 在留資格「介護」 |
| 資格要件 | 介護福祉士 |
| 就労可能期間 | 永続的な就労可能 |
| 母国での資格・学習経験 | 個人による |
| 日本語能力要件 | N2程度 |
| 受入調整機関の支援 | なし |
| 就労可能なサービス | 制限なし |
| 制度名 | 技能実習 |
| 資格要件 | 資格なし ※実務要件を満たせば 受験可 |
| 就労可能期間 | 最長5年 |
| 母国での資格・学習経験 | 監理団体の 選考基準による |
| 日本語能力要件 | N4程度 |
| 受入調整機関の支援 | あり ※監理団体による 受入調整 |
| 就労可能なサービス | 制限あり ※訪問系サービスは 不可 |
| 制度名 | 特定技能(1号) |
| 資格要件 | 資格なし ※実務要件を満たせば 受験可 |
| 就労可能期間 | 最長5年 |
| 母国での資格・学習経験 | 個人による |
| 日本語能力要件 | 現場で働く上で必要な 日本語能力 |
| 受入調整機関の支援 | あり ※登録支援機関による サポート |
| 就労可能なサービス | 制限あり ※訪問系サービスは 不可 |
上記のように、介護の知識や経験を積んで長く働いてくれる外国人を求めるなら、在留資格「介護」に該当する人材が適しています。
参照元(PDF):厚生労働省 外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf)
特定技能人材を採用する際に
押さえておきたいこと
在留資格「介護」ではなく特定技能の在留資格を持つ外国人を採用する際には、以下の点をチェックしましょう。
- 外国人を送り出す機関が、どのような教育や学習支援を行っているか
- 外国人サポートの支援内容や料金体系、追加料金発生の条件など
特定技能は最長5年間の在留となるため、長期的に働ける人材を確保するには介護福祉士資格を取得し、在留資格「介護」への移行を支援する仕組みがある送り出し機関に依頼することが重要です。
まとめ
在留資格「介護」は、日本の介護現場で長期間働けることが強みです。
外国人介護人材の適切な活用は、人手不足の解消だけでなく、介護サービスの向上にも寄与します。今後も外国人の受け入れと定着支援を進めることが、日本の介護業界にとって重要な課題となるでしょう。
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