介護業界では人手不足が深刻化しています。その解決策として、特定技能外国人を受け入れる動きが広がっています。
本記事では、特にネパール人材の採用に焦点を当て、受け入れ手順や注意事項を詳しく解説します。ネパール人の特性を知り、外国人の介護人材を採用する際の参考にしてください。
1.求人情報の公開
ネパールの特定技能人材を採用するには、まず求人情報を公開します。
ネパール人労働者に直接アプローチする方法として、受け入れ機関がネパール国内で採用活動を行うことが認められています。また、駐日ネパール大使館を通じて求人を申し込むことも可能です。
2.特定技能雇用契約の締結
受け入れ機関は、特定技能試験合格者や技能実習を修了したネパール人と雇用契約を結びます。この契約では、業務内容や労働時間、報酬などの詳細を明記する必要があります。
3.在留資格認定証明書の交付申請
受け入れ機関は、地方出入国在留管理官署に「在留資格認定証明書」の交付を申請します。交付後、この証明書をネパールの応募者に送付します。
4.ビザ発給の申請
ネパール人労働者は、在留資格認定証明書を使って在ネパール日本国大使館でビザを申請します。この手続きが完了すると、日本への渡航が可能になります。
5.住居の準備や現場職員への説明
受け入れ準備として、住居の確保や職場での文化・宗教に関する説明会を実施します。ネパール人材がスムーズに働ける環境作りが重要です。
6.ネパールを出国・就労開始
必要な手続きを終えたネパール人材は日本に入国し、正式に就労を開始します。
日本に在住するネパール人を採用するまでの流れ
1.雇用契約の締結
日本在住のネパール人材を採用する場合は、「特定技能に係る雇用契約」が必要です。技能実習修了者や試験合格者を対象とし、契約条件を明確にします。「特定技能に係る雇用契約」で定めなければならないとされている内容は次の通りです。
・従事する業務
・労働時間
・報酬額
・差別の禁止
・有給休暇
・生活状況の把握
2.在留資格変更許可申請
採用するネパール人が留学生などの場合、在留資格を「特定技能」へ変更する手続きが必要です。この際、納税証明書や保険加入状況の証明が求められます。
3.特定技能ビザの取得
在留資格の変更が認められると、「特定技能1号」の在留資格が付与されます。これにより就労が可能となります。
4.就労開始
すべての手続きを完了した後、ネパール出身の職員は特定技能外国人として働き始めます。就労開始後は、3ヶ月ごとに活動状況を出入国在留管理庁に定期的に報告する必要があります。この報告には、職員の勤務状況や生活環境などが含まれます。
ネパール人を受け入れる前に知っておきたいこと
ヒンドゥー教
ネパール人の多くが信仰するヒンドゥー教は、日常生活に深く根付いています。例えば、他人が口を付けたものを食べることは避ける文化があり、大皿料理をシェアする際にはとりわけ用のトングやスプーンを用意する配慮が必要です。また、牛肉を食べることは禁止されており、食事の際にはメニュー内容の事前確認や適切な配慮を行うことが大切です。
さらに、右手は神聖、左手は不浄とされており、人の頭に触れることは避けるべきといった注意点もあります。これらの文化的背景を理解し、職場環境や日常生活での配慮を心がけることが重要です。
ネパール人の国民性
ネパール人は助け合いの精神が強く、仲間意識を大切にする温厚な性格が特徴です。特に年長者を尊重し、家族や仲間を支えることに誇りを持っています。このため、職場でも協調性を発揮し、日本人従業員とも早い段階で打ち解ける傾向があります。
また、多様性を受け入れる国民性から、多文化環境にも適応しやすいと言えます。一方で、時間に対する感覚が日本人とは異なるため、進捗確認をこまめに行い、締め切り前に声をかけるなどの工夫が必要です。
人口や公用語
ネパールの人口は2022年時点で約3054万人(※)で、世界的にみて人口は少ない方です。一方、若年層が多く、ボリュームゾーンは20代で、労働年齢人口が全体の6割以上を占めています(※)。また、公用語はネパール語ですが、英語を話せる人が多いことも採用時の利点です。このように若く活気ある労働人口を持つネパールは、人材採用において魅力的な選択肢と言えます。
※参照元:外務省:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nepal/data.html
※参照元:公益財団法人日中技能者交流センター:http://www.jcsec.or.jp/files/news_190.html
現地の平均月収
ネパールの平均月収は約13,460円から25,760円(1 NPR = 約0.83円換算)です。年間収入は約161万円で、多くの労働者は約94万円前後の収入を得ています。性別による差も大きく、男性は約152万円、女性は約77万円です。このような収入水準から、日本での高収入が非常に魅力的に映る理由の一つといえます。
※参照元:AVERAGE SALARY SURVEY:https://www.averagesalarysurvey.com/ja/salary/nepal 2025.2月調査時点
受け入れ前に施設内で共有しておきたいこと
宗教や文化への理解
施設内で宗教や文化についての情報を共有し、ネパール人労働者が安心して働ける環境を整えましょう。ネパールの文化や宗教には独自の習慣が多く、特にヒンドゥー教の影響を受けた価値観が重要です。
例えば、右手を神聖、左手を不浄とする考え方や、人の頭に触れることを避ける習慣があります。これらを職員全体で理解することで、スムーズなコミュニケーションと信頼関係を築くことができます。
食べ物などへの配慮
ネパール人労働者の食習慣に配慮し、事前に食べられないものを確認しましょう。ヒンドゥー教では牛肉が禁忌とされており、他の肉や食材も個人によって制限が異なります。調理時には食材を分けたり、個別の盛り付けを行うといった柔軟な準備が求められます。
また、大皿料理の場合はトングや専用スプーンを用意し、衛生面にも配慮しましょう。これにより、彼らが安心して食事を楽しめる環境が整います。
断食中の配慮
断食中は適切な理解と配慮が必要です。断食は信仰や文化に基づいた行為であり、周囲の理解が求められます。健康面を心配しすぎず、状況に応じた柔軟な対応を心がけましょう。
たとえば、断食中の従業員には無理に食事を勧めることなく、リラックスした状態で仕事ができるようサポートすることが大切です。職員間のコミュニケーションを強化し、お互いの理解を深める機会を設けることで、良好な職場環境を維持できます。
まとめ
ネパールの特定技能人材は、介護業界の人手不足解決に貢献します。助け合いの精神が強く、協調性が高いため、介護職に適しています。採用には求人公開、雇用契約、在留資格申請、住居準備などの手続きを対応することになるため、事前に確認を行いましょう。また、時間感覚の違いを考慮し、業務進行をサポートする工夫も求められます。これらをふまえて適切な準備を行う事で円滑な受け入れが可能になります。
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