宿泊業界の人手不足を解消するため、外国人材の雇用が注目されています。本記事では、ホテル・旅館で活用できる就労ビザの種類や適用条件、許可・不許可事例を解説。さらに、特定技能や技人国などの在留資格の違いや、アルバイトが可能な資格外活動許可についても紹介します。
外国人材のホテル・旅館等での就労ビザとは
宿泊業で外国人を雇用する際には、「特定技能」「技術・人文知識・国際業務(技人国)」「技能」といった就労系の在留資格が必要です。また、就労制限のない「永住者」「日本人の配偶者等」などの身分系在留資格、さらには留学生や家族滞在ビザを持つ外国人が週28時間以内でアルバイトできる「資格外活動許可」が活用できます。
特定技能は宿泊業の幅広い業務に対応し、技人国は通訳やフロント業務など専門職向け、技能は高度な専門技術を持つ料理人向けです。身分系の在留資格は就労制限がないため、全業務での雇用が可能になります。自社に合った外国人材の採用を進めるためには、適切な在留資格を理解することが大切です。
ホテルでの就労ビザ許可事例
観光学を専攻した外国人がホテルのフロント業務に従事
日本で観光学を学び、大学を卒業した外国人が、日本のホテルに就職しました。
外国人観光客が多く訪れるホテルで、フロント業務や施設案内を担当し、外国語を活かした接客を行いながら、月約22万円の報酬を受けています。
※参照元:【PDF】:ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について:https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
観光客の多い旅館で通訳・翻訳業務を担当
日本の大学を卒業した外国人が、日本の旅館に就職しました。
本国からの観光客を増やすため、旅行会社との交渉をサポートし、通訳・翻訳業務や、従業員への外国語指導を担当しています。月約20万円の報酬を受けています。
※参照元:【PDF】:ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について:https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
空港近くのホテルでマーケティング・広報業務を担当
日本の大学で経済学を専攻し、卒業した外国人が、空港近くのホテルに就職しました。
集客を目的としたマーケティングリサーチや、外国人向けの広告作成、ホームページなどの広報業務に従事しています。月約25万円の報酬を受けています。
※参照元:【PDF】:ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について:https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
経営学を学んだ外国人がホテルの幹部候補として採用
日本の大学で経営学を専攻し、卒業した外国人が、ホテルの総合職(幹部候補)として採用されました。2か月間の座学研修と4か月間のフロント・レストラン研修を経て、
月約30万円の報酬を受けながらフロント業務や外国人対応、宿泊プランの企画立案を担当しています。
※参照元:【PDF】:ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について:https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
日本の専門学校で翻訳・通訳を学び、旅館で多言語対応を担当
日本の専門学校で翻訳・通訳コースを専攻し、専門士の称号を取得した外国人が、旅館に就職しました。
月約20万円の報酬を受けながら、フロントでの外国語対応や、外国語版ホームページの作成、館内案内の翻訳を担当しています。
※参照元:【PDF】:ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について:https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
ホテルでの就労ビザ不許可事例
業務内容が在留資格の対象外だったため不許可
日本で経済学を専攻し、大学を卒業した外国人が、日本のホテルに採用される予定で申請を行いました。
しかし、詳細な業務内容を確認したところ、主な業務は宿泊客の荷物運搬や客室の清掃であることが判明しました。
これらの業務は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しないため、不許可となりました。
※参照元:【PDF】:ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について:https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
通訳業務の必要性が認められず不許可
日本で日本語学を専攻し、大学を卒業した外国人が、日本の旅館で外国人宿泊客向けの通訳業務を行う予定で申請を行いました。
しかし、旅館の外国人宿泊客の大半が申請者の母国語とは異なる言語を使用しており、
申請者の母国語を用いた通訳業務の業務量が十分でないと判断され、不許可となりました。
※参照元:【PDF】:ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について:https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
就業予定の業務内容が在留資格に該当せず不許可
日本で日本語学を専攻し、大学を卒業した外国人が、日本の旅館で外国人宿泊客向けの通訳業務を行う予定で申請を行いました。
しかし、旅館の外国人宿泊客の大半が申請者の母国語とは異なる言語を使用しており、
申請者の母国語を用いた通訳業務の業務量が十分でないと判断され、不許可となりました。
※参照元:【PDF】:ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について:https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
就業予定の業務内容が在留資格に該当せず不許可
日本の大学で商学を専攻し、卒業した外国人が、新しく設立された日本のホテルに採用される予定で申請を行いました。
しかし、業務内容を確認したところ、駐車場での誘導やレストランでの配膳・片付けが主な業務であることが判明しました。
これらの業務は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しないため、不許可となりました。
※参照元:【PDF】:ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について:https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
日本人従業員との給与格差が不適切と判断され不許可
日本の大学で法学を専攻し、卒業した外国人が、日本の旅館でフロント業務(予約対応や館内案内)を行う予定で申請を行いました。
しかし、同じ業務を行う日本人従業員の給与(月額20万円)に比べ、申請者の給与(月額15万円)が低いことが判明しました。
合理的な理由が説明されず、日本人と同等の報酬が確保されていないと判断されたため、不許可となりました。
※参照元:【PDF】:ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について:https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
宿泊業での「特定技能」について
2019年に創設された「特定技能」ビザは、宿泊業界の深刻な人手不足を補うために導入されました。「特定技能1号」は、フロント、接客、清掃、レストラン業務など幅広い業務に従事可能で、最長5年間の在留が認められています。ですが、家族の帯同が認められません。
取得には宿泊業技能測定試験および日本語能力試験N4以上の合格が必要です。
一方、「特定技能2号」は2023年から宿泊業にも適用され、熟練した技能を持つ外国人が対象で、在留期間の更新や家族の帯同も可能となります。これらの制度を活用することで、企業は即戦力となる外国人材を確保し、宿泊業の安定的な運営につなげることができます。
宿泊業での「技術・人文知識・国際業務」について
「技術・人文知識・国際業務」ビザ(通称:技人国)は、外国人が専門知識を活かして宿泊業で働くための在留資格です。適用可能な職種には、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客向けの通訳・翻訳、外国市場向けの営業・マーケティング、広報・企画(外国語版ホームページの作成やSNS運用)などがあり、主に管理業務や専門的な業務が対象となります。
ただし、清掃やベッドメイキング、配膳などの単純労働は認められず、申請には大学卒業などの学歴や職務経験が必要です。適切な要件を満たした外国人材を採用することで、宿泊業の国際化やサービス向上に貢献できます。
「身分系の在留資格」について
身分系ビザとは、出入国在留管理庁が身分や地位に応じた在留資格として設定している「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4つを総称した用語です。
これらは外国人が一定の期間以上日本に住むことを前提とした在留資格であり、活動内容を制限されないため、日本人と同じようにどのような職種でも就労が可能です。
永住者は半永久的な在留が可能で、定住者は特別な理由を考慮して指定期間の在留が認められます。日本人の配偶者等や永住者の配偶者等は、日本人または永住者との婚姻関係にある外国人が対象で、婚姻の実態や安定した収入が審査基準となります。
これらの資格を持つ外国人は就労制限がなく、長期的な雇用が可能であるため、宿泊業においても幅広い業務に従事できます。
「資格外活動許可」について
資格外活動許可とは、現に有する在留資格の範囲外で収入を得る活動を行う場合に必要な許可です。特に、留学生や家族滞在ビザを持つ外国人がアルバイトをする際に取得することが一般的です。
許可を得れば、週28時間以内(長期休暇中は1日8時間以内)での就労が可能ですが、風俗関連業務には従事できません。
資格外活動許可には、アルバイト先が変わっても適用される「包括許可」と、特定の業務に限定される「個別許可」の2種類があります。これにより、学業や本来の活動を妨げない範囲で生活費を補うための就労が認められています。
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